Pat Metheny
パット・メセニーが作る曲には日本人にも通ずる哀愁があって心を惹かれる。彼はたぶんアイリッシュだと思うんだけど違うかな。
で、この曲。「TOYS」という映画(1992年製作)のサウンドトラックの中の1曲、『Let Joy and Innocence Prevail』。日本語に訳すと「喜びと純真さに勝利を」。長いタイトルなんで曲名を聞くだけで分かる人は少ないだろう。でもこの映画ではメインテーマと言ってよい重要な曲で、すばらしい作品だ。
哀愁をたたえた美しいメロディを切々と奏でるパットのギター。初めは静かに、少しずつ昂まり、最後には壮大なスケールへと展開する。
いかにもパット・メセニーらしい名曲……と思いこんでいたら、違った。
作曲はTrevor Horn/Hans Zimmer だった。パット・メセニーは演奏しているだけ。
そもそも、この映画のサウンドトラック全体を、トレバー・ホーンとハンス・ジマーがプロデュースしている。アーティストとしてもパット・メセニーのほか、エンヤ、Tori Amos、トーマス・ドルビー、Frankie Goes To Hollywood、Grace Jonesなど錚々たるメンバーが並んでおり、サウンドトラック・アルバムとしてはとても聴き応えがある。ちなみにパット・メセニーの『Let Joy and Innocence Prevail』はインストだが、その歌ありバージョンをGrace Jonesが演っている。
音楽的にはなかなかの傑作であるこの「TOYS」なのだが、映画としては……個人的にはあまり好きじゃない。だいたい主役のロビン・ウィリアムズが好みじゃない。ボクの個人的感想なのでファンのかたには申し訳ないが、なんだろう、演技がうますぎて(?)鼻につく、というようなところがある。
ロビン・ウィリアムズ演ずる主人公の父親が経営していた巨大おもちゃメーカーが、父の死により叔父に受け継がれる。軍国主義者である叔父はおもちゃを小型兵器に改造し、軍需工業化しようとするが、それに気づいた主人公がおもちゃの兵隊たちと戦い勝利する、というファンタジー・ドラマ。
勧善懲悪のどこにでもあるようなストーリーと演出は退屈だが、カラフルでかわいいのでそれなりに楽しめないことはない。
俳優だと、主人公の妹役のJoan Cusackと叔父の息子を演じたヒップホップ・スターのLL Cool Jがおもしろい。
まあ、ともかく映画よりサントラのほうがだんぜん重要な作品だが、当然この映画があって音楽の発注があったのだろうから、感謝はしなくてはなるまい。
Pat Metheny バージョン
Grace Jones バージョン
CD(貴重。廃盤近し?しかもiTunesにもありません)