子供の方程式
♪小学校3年生のミチコチャンは、ちょっとオマセな女の子。
幼稚園時代は病弱で、2年保育に延べ半年も通っただろうか…ってほど。
家と病院の往復で、すっかり大人の顔色を見て過ごすような子供になっていたみたい。
ミチコチャンはその頃起こっていたGSブームっていうのに、ちょっと興味をソソラレタのです。 だって「おねえさんたちが失神して倒れちゃう」って、どういうこと? それってなに? って疑問がムクムク湧き上がってきちゃったから。
テレビに映し出されるおにいさんたちはお行儀よく見えたし、それより何よりカッコよく見えました。
お父さんやお母さんたちが渋い顔をしているのはわかっていましたが、おねえさんたちやおとなたちの気持ちもやっぱりわからない。
そう、わかるのは“なんだか秘密の匂い”ってことだけ。
レコード屋さんにドキドキしながら行ってみました。
一人で行ったのは初めてです。 ウィーン少年合唱団のレコード買うときはお母さんと行ったけど、どうしてか今回は一人で行かなきゃって思ったのです。
まるで、秘密の任務を遂行するみたいに…♪
というのが、私にとってのGS時代のイメージ。
子供でしたから、絵に描いたようにタイガースのジュリー(沢田研二さん)が大好きになりました。
「落葉の物語」は、1968年の大ヒット曲「君だけに愛を」のB面。
ジュリーが ♪君だけに〜♪ と指差して歌うのですが、そのときに指差された女性が(もちろん実際はヤミクモに指差していただけだと思いますが)失神してしまうという現象が、あちらこちらで起こっていたようです。
A面「君だけに愛を」が“動”ならば、B面「落葉の物語り」は“静”という表現がピッタリの曲。 私は、この曲がとても好きだったのです。
その頃は聞きなれないチェンバロの音やオーケストレーションがよかったのでしょうか。(実はもう長く聞いていないので、本当にチェンバロが入っていたかどうか確認できていません。シングル盤は手元にあるのですが、レコードプレーヤーが動きません)
とにかく特別な曲として、私の中にインプットされたのです。
小学校3年生の少女には“ショコラーテ”って言葉が、やけにお洒落に響いた記憶があります。
ひょっとしてこの頃から“バレンタインデーにはチョコレート”ってことになったのかもしれません。だって、タイガースは明治チョコレートのイメージキャラクターになっていましたから。 あの赤いソノシートも持っています(笑)
この曲は、橋本淳作詞・すぎやまこういち作曲 ですが、なぜか私は亡くなられた安井かずみさんのイメージを持っていました。
安井かずみさんが提供したのは「シー・シー・シー」という曲の詩だったのに。
子供の私はなぜかわかりませんが
ショコラーテ→安井かずみ→フランス
なんて方程式を作り上げ?? とにかくオマセだったから(笑)安井かずみさんに憧れていました。 そして、それがずっと頭の隅にあって、高校生の頃にはサガンやボーボワールの本を片手に歩くくらいにはなっていました。
「落葉の物語」には大きな影響を受けたわけですが、幼い日の頭の中はメチャクチャであったことが判明し脱力状態です。
30年前、渡辺音楽出版社は麻布台にありました。
会社の近くに有名な“CHIANTI”というお店があり、転職の際にそのことが決めてのひとつになったように思います。 好きな曲により、不思議な縁は繋がっていくのかもしれません。
沢田研二『落葉の物語』
かべみちこ
茅ヶ崎出身 B型
関西テレビ放送を経て渡辺音楽出版に入社。
現在は 心理関係の仕事をしている。