「ねえねえ、最近なに聴いてんの?」
あの頃は、音楽好きが顔を合わせれば「久しぶり。元気だった?」の代わりに、こう言って近況を報告し合ったものである。
あの頃というのは、わたしにとっては20世紀の最後の25年(長い!)ほどだろうか。
当時はまだポップスが十分進化している過程にあり、お互いに確認しながら情報を交換し合う必要を感じるほどだった、ということなのだろう。
気がつけば、巷で(といったら言い過ぎで、私の回りでということかもしれないが…)この言葉をつとに耳にしなくなった。
そのことに、まだ音楽関係者でもあるわたしは危機感を持ったほうがいいのだろうが、もうあの頃のようには絶対に戻らない気もする。
音楽鑑賞(この言葉さえ死語かな?)のほかに、ゲームとかケイタイとかネットとか時間消費のエンタメのツールがたくさん出来てしまったのだから、悲観するよりも、それでいいのだと考えたほうが気が楽だ。
“今には今なりの音楽の楽しみ方がある”のだから。
さて、一曲入魂の「一曲」を選ぶにしても、“あの頃の音楽ファン”である私は、何を選ぶべきかコメカミが痛くなるほど考えこんでしまう。
でもその理由は、たくさん入魂の曲があって選び切れない…ということでは決してない。
音楽の嗜好というのが“人生の価値観”とほぼイコールで語られることになれてしまっているせいで、それを人前に晒すことに躊躇いを覚えると言ったほうが正しい気がする。
言い換えれば、わたしがカッコつけで、人に本心を披露するのが苦手な性格というだけ。
この曲が好きだ!と叫んだら、相手にどう思われるだろう?
ほほう、そういうヤツだったのかと、いらぬ誤解を受けたりしないだろうか?
だって最近の曲を選べば、若者に媚びてるようだし、昔の曲を紹介すれば薀蓄オヤジになってしまいそうじゃないか。
考えれば考えるほど、八方ふさがりに思えてしまう。
それが理由で、今日まで書きたいのに「一曲入魂」の原稿が入れられないでいたのだから、私も相当ケツの穴の小さい男だ。
実はわたしは、“BREAD”みたいな毒にも薬にもならんメロウなポップスの大ファンで、学芸大駅に近いスナックでデヴィット・ゲイツの「IF」を弾き語りで歌っていましたなんて、どんな顔をして言えばいいのだ?
あ!言ってしまったけど、いまのは忘れてください。
というわけで、今日の「一曲入魂」は、わたしのケツの穴の小ささをさらけ出すに留め、本心はまだ隠しておこうと思う。
でも、最近ハラの底から感動した曲がないわけではない。
たとえ、感動の種類が“笑い”にしてもだ。
最後にそれを披露して、お茶を濁すコトにしよう。
え?
著作権が?
そんなコト、知〜らない!
初めてこれを聴き、もし笑わないですんだら、あなたは変人だと断言してしまおう。
知ってる人も、何度でも我慢せずに楽しんでください。
それでは、また…。
IKUZO ikzo Michael Jackson Thriller