Gilbert O'Sullivan
1972年のビルボード年間チャート2位というビッグヒット。
それ以上に、わたしの中では70年代にレコーディングされた全ての曲の中でもベスト10に入るほど、マジに好きな曲だ。
ハーフ・ディミニッシュを多用し心の表情のように移ろう完璧なコード進行と、キレイに韻を踏んだ詩。
美しいメロディラインと鼻にかかった切ないボーカル、律儀にメローディーを崩さずに弾くガット・ギターの間奏。
まったく、非の打ち所もございません。
わたしは学生時代、仲間とアルバイトでハコバンをやっていたことがある。
学芸大学の高架下にあったタンポポというピアノ・バーだった。
あの頃、一日に3回はこの曲のリクエストを貰って演奏してたっけ。
「アローン・アゲイン演ってよ」
「えっ?さっき歌ったばっかりですよ」
「いいから演れ!アローン・アゲイン・アンド、アゲイン・アゲインだ」
みたいな調子で、誰にでも好かれる歌だった。
あの頃は詩の内容まではまったく興味がなく、「アローン・アゲイン」ってくらいだから、フラれて一人ぼっちになってしまった男の失恋ソングだろうと考えていた。
ところが、どうしてどうして…。
大好きな歌の意味を後日やっと理解するってのも情けないが、実は色恋とは関係なく人生をほろ苦く綴ったもの。
夢かなわぬ現実の世界に疲れた僕は、
いつか塔のテッペンから飛び降りてやろうと思っている
教会でただ一人そんなことを考えてる僕を見ても、
回りの人間は「彼女にフラれたんでしょう?」ぐらいに思って去っていく
そして、また僕は独りぼっちさ、当たり前のようにね
陽気で楽しそうだった昨日までの僕を、
現実がやってきてめちゃくちゃにしてしまった
慈悲に満ちたあなたの存在なんか信じることが出来なくなった僕を残し、
神様まで去っていった
そして、また僕は独りぼっちさ、当たり前のようにね
きっと世界には、傷ついているのに癒されない人たちが、
僕と同じように放ったらかされているんだろう
いったいどうすればいいんだ、どうすれば…
いいことなんか何もなかったここ数年を、
僕は振り返る
父が死に人目も気にせず泣いたこと
そして唯一愛した人に先立たれた母は、
僕の慰めにもかかわらず、
無口になったまま65歳でこの世を去った
母まで去ってしまったとき、
僕は一日中泣いて、泣いて、泣いた
そして、また僕は独りぼっちさ
それはもう、当たり前のようにね
あの頃この詩の内容をよく理解していたら、たぶん一日に3回も歌わなかったろう。
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