◆このブログが気に入ったら、つぶやいてみんなに知らせてください。

2009年05月24日

ギルバート・オサリバン『アローン・アゲイン』

text by ワダマサシ


Gilbert O'Sullivan

1972年のビルボード年間チャート2位というビッグヒット。
それ以上に、わたしの中では70年代にレコーディングされた全ての曲の中でもベスト10に入るほど、マジに好きな曲だ。
ハーフ・ディミニッシュを多用し心の表情のように移ろう完璧なコード進行と、キレイに韻を踏んだ詩。
美しいメロディラインと鼻にかかった切ないボーカル、律儀にメローディーを崩さずに弾くガット・ギターの間奏。
まったく、非の打ち所もございません。

わたしは学生時代、仲間とアルバイトでハコバンをやっていたことがある。
学芸大学の高架下にあったタンポポというピアノ・バーだった。
あの頃、一日に3回はこの曲のリクエストを貰って演奏してたっけ。
「アローン・アゲイン演ってよ」
「えっ?さっき歌ったばっかりですよ」
「いいから演れ!アローン・アゲイン・アンド、アゲイン・アゲインだ」
みたいな調子で、誰にでも好かれる歌だった。

あの頃は詩の内容まではまったく興味がなく、「アローン・アゲイン」ってくらいだから、フラれて一人ぼっちになってしまった男の失恋ソングだろうと考えていた。
ところが、どうしてどうして…。
大好きな歌の意味を後日やっと理解するってのも情けないが、実は色恋とは関係なく人生をほろ苦く綴ったもの。

夢かなわぬ現実の世界に疲れた僕は、
いつか塔のテッペンから飛び降りてやろうと思っている
教会でただ一人そんなことを考えてる僕を見ても、
回りの人間は「彼女にフラれたんでしょう?」ぐらいに思って去っていく
そして、また僕は独りぼっちさ、当たり前のようにね

陽気で楽しそうだった昨日までの僕を、
現実がやってきてめちゃくちゃにしてしまった
慈悲に満ちたあなたの存在なんか信じることが出来なくなった僕を残し、
神様まで去っていった
そして、また僕は独りぼっちさ、当たり前のようにね

きっと世界には、傷ついているのに癒されない人たちが、
僕と同じように放ったらかされているんだろう
いったいどうすればいいんだ、どうすれば…

いいことなんか何もなかったここ数年を、
僕は振り返る
父が死に人目も気にせず泣いたこと
そして唯一愛した人に先立たれた母は、
僕の慰めにもかかわらず、
無口になったまま65歳でこの世を去った
母まで去ってしまったとき、
僕は一日中泣いて、泣いて、泣いた
そして、また僕は独りぼっちさ
それはもう、当たり前のようにね


あの頃この詩の内容をよく理解していたら、たぶん一日に3回も歌わなかったろう。









posted by 「HEART×BEAT」事務局 at 12:52| Comment(0) | 一曲入魂 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月06日

Pat Metheny『Let Joy and Innocence Prevail』

text by 福岡智彦


Pat Metheny

パット・メセニーが作る曲には日本人にも通ずる哀愁があって心を惹かれる。彼はたぶんアイリッシュだと思うんだけど違うかな。

で、この曲。「TOYS」という映画(1992年製作)のサウンドトラックの中の1曲、『Let Joy and Innocence Prevail』。日本語に訳すと「喜びと純真さに勝利を」。長いタイトルなんで曲名を聞くだけで分かる人は少ないだろう。でもこの映画ではメインテーマと言ってよい重要な曲で、すばらしい作品だ。

哀愁をたたえた美しいメロディを切々と奏でるパットのギター。初めは静かに、少しずつ昂まり、最後には壮大なスケールへと展開する。
いかにもパット・メセニーらしい名曲……と思いこんでいたら、違った。
作曲はTrevor Horn/Hans Zimmer だった。パット・メセニーは演奏しているだけ。

そもそも、この映画のサウンドトラック全体を、トレバー・ホーンとハンス・ジマーがプロデュースしている。アーティストとしてもパット・メセニーのほか、エンヤ、Tori Amos、トーマス・ドルビー、Frankie Goes To Hollywood、Grace Jonesなど錚々たるメンバーが並んでおり、サウンドトラック・アルバムとしてはとても聴き応えがある。ちなみにパット・メセニーの『Let Joy and Innocence Prevail』はインストだが、その歌ありバージョンをGrace Jonesが演っている。

音楽的にはなかなかの傑作であるこの「TOYS」なのだが、映画としては……個人的にはあまり好きじゃない。だいたい主役のロビン・ウィリアムズが好みじゃない。ボクの個人的感想なのでファンのかたには申し訳ないが、なんだろう、演技がうますぎて(?)鼻につく、というようなところがある。

ロビン・ウィリアムズ演ずる主人公の父親が経営していた巨大おもちゃメーカーが、父の死により叔父に受け継がれる。軍国主義者である叔父はおもちゃを小型兵器に改造し、軍需工業化しようとするが、それに気づいた主人公がおもちゃの兵隊たちと戦い勝利する、というファンタジー・ドラマ。
勧善懲悪のどこにでもあるようなストーリーと演出は退屈だが、カラフルでかわいいのでそれなりに楽しめないことはない。
俳優だと、主人公の妹役のJoan Cusackと叔父の息子を演じたヒップホップ・スターのLL Cool Jがおもしろい。

まあ、ともかく映画よりサントラのほうがだんぜん重要な作品だが、当然この映画があって音楽の発注があったのだろうから、感謝はしなくてはなるまい。



Pat Metheny バージョン


Grace Jones バージョン


CD(貴重。廃盤近し?しかもiTunesにもありません)


posted by 「HEART×BEAT」事務局 at 22:44| Comment(0) | 一曲入魂 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。